そんな大樹の射を変えたのは、
近くの神社の竣工式で行われた、神事としての射会を見に行った時の事。
遠方から招かれた人が披露した射は、幼い大樹の心を震わせた。
神聖で厳かで完成された美しい射形を間近で見て、大樹は変わった。
闇雲に当てる事だけ考えていた今までとは違い、
先生の指導を良く聞いて鏡で自分の型をチェックする様にもなった。
弓道はスポーツとしてだけでなく、神に奉納する神聖な物として捉える様になった。
そんな心境の変化が、今の大樹の完成された美しい射形に繋がっている。
矢を弓に番(ツガ)えて高く持ち上げる。
高い位置で弓を押して弦を引きながら、ゆっくりと目の高さまで引き下ろす。
キリキリと弦が引き伸ばされる音。
そのまま数秒間、的を見据えたまま瞬きもせずに静止している。
弓道の一手の中で、この瞬間が一番好きだ。
『動』と『動』の間の『静』
背筋がピンと張って体のラインが美しい。
極限まで高められた緊張感と集中力。
それでいて的中させようと言う気負いは微塵も感じられない。
この瞬間の大樹の表情は私の心を震わせる。
大樹なのに…
凛として美しい……


