「変な気?」
「何でもねぇ。気にすんな。
先に部屋に上がってな。俺、もう少し弓やりてぇから」
「私もここに居る。
大樹の弓道姿久しぶりに見たい」
大樹は野菜収穫用のプラスチックカゴを一つ持ってきて、裏返して土の上に置いた。
私の座る席を作ってくれたみたいだけど、カゴの裏の土汚れに気付き、
首に巻いていたタオルを外してその上に敷いてくれた。
大樹は意外と優しい。
たまにこうやって、さりげない気遣いを見せてくれる。
久しぶりに感じたその優しさが、嬉しいようなくすぐったいような…そんな気持ちにさせた。
一人でクスクスと笑っていると
「キモイ笑い方すんな」
と余計な一言が……
この口の悪さが無ければ、少しはマシな男に見えるのに。
パシュッ…… バスッ
パシュッ…… バスッ
弦が矢を弾き、的に刺さる音が心地好く体に響いてくる。
大樹の射形には自然な美しさを感じる。
的に当てる事ももちろん大切だが、型を重んじる礼射は美しさも大切。
大樹が弓道を習い始めたのは小学4年の時の事。
習いたくて始めた訳ではなく、
大樹のおじさんがいつも落ち着きがなく集中力にも乏しい息子を心配し、
知り合いの弓道場に連れて行ったのがきっかけだった。
その頃の大樹は矢が的に当たるとはしゃぎ回って喜び、
外れると地団駄を踏んで悔しがった。
型何てどうでもいいと言う感じで、的に当てる事しか考えていなかった。


