シャッターの開いた倉庫内で、大樹のおじさんがもうすぐ出番を迎えるジャガイモ収穫機の整備を行っていた。
私の挨拶に片手を上げて応えてから、
倉庫裏を指さし、そっちに大樹が居ることを身振りだけで教えてくれた。
大樹が倉庫裏で何をしているのかと言うと、弓を引いている。
稲藁を束ねた手製の的を作り、そこから28m離れた位置で矢を射る。
手持ちの矢が無くなると的まで行って矢を抜いて戻り、また矢を放つ。
それを黙々と続けるのが小学4年生の頃からの大樹の日課。
週に一回、旭川市にある弓道場で先生に稽古をつけて貰っているが、
その日以外は自主練習するしかない。
中学も高校も弓道部がないので試合に出るのも個人戦ばかり。
大樹の弓はいつも孤独だ。
倉庫の角を曲がると、
大樹の斜め後ろ姿を視界に捕えた。
矢が放たれる瞬間のパシュッと言う小気味よい音が鼓膜を揺する。
雨で湿った土の上に段ボールを敷き、その上に大切な矢が置いてあった。
そこから次の矢を拾い上げた時、大樹は私の存在に気付いてこっちを見た。
「どうした?ジャガイモか?人参か?
親父ならさっきまでそこに……」
「そうじゃないよ。野菜買いに来たわけじゃない。
暇だから遊びに来ただけ」
「あ? 店は?」
「今日はお客さんも少ないからのんびりしなって言われたの」
「ふーん。青空は?一緒じゃねぇの?」
「それがね?あの子、夏休みの宿題するんだって。
一人で大樹の家に遊びに行きなって言われた。
青空がそんな事言うなんて驚きだよねー」
「…あいつ…変な気使いやがって……」


