大樹は約束通り怒り出さず、最後まで静かに私の話しを聞いていた。
話が終わった後もそのまま無言で、
考え込んでいるかのように、ジッとシーツの皺に目線を止めていた。
私は昨日の喜びがまたふつふつと沸いてきて、温かな想いの中に浸っていた。
東京では夏の間外すしかなかったネックレス。
ここでは隠す必要がないので、再び胸元に下げられている。
それをTシャツの衿元から引っ張り出して、金色のリングを指で摘み角度を変えながら紫色の輝きを楽しんでいた。
「やっとこの指輪を返せるんだ…5年間長かったな…
ねぇ大樹、来年の夏休みは流星もフラノに連れて来ようと思ってるんだ!」
「… ぁぁ…」
「その時はお願いだから喧嘩腰な態度は取らないでね?」
「… ぁぁ…」
「流星ったら結構ヤキモチ焼きみたいで、
昨日の夜も今朝も『大樹になびかないで』って、そんなこと言うんだよ?
私と大樹の間に心配される事なんて起きる筈ないのにねー!おっかしーの!」
「………」
「あれ…?今の笑う所なんだけど……大樹?ねぇ大樹?……おーい?」
私と大樹が…なんて有り得ない心配をされていると言ったら、
「はぁ?んな訳ねーじゃん!笑わせんな!」って、
大爆笑するかと思ってたのに…何で黙ってるの?
大樹は無表情で、まだシーツの皺を眺め続けている。
話しかけても相槌すら打たなくなり、目を開けたまま眠ってしまったかと心配した。
思わず顔の前で手をヒラヒラさせ意識を確かめると同時に、階段下から母の声がした。
その声で大樹はハッとした表情を浮かべ顔を上げた。


