去年まではそんな風に店中心に動いていた紫だが、今年はそうはいかない。
特待生として入学したもんだから、
夏休み直前にある期末テストをサボるわけにいかず、
夏休みに入るまで、帰るに帰れないという事だった。
もちろん店の事はすげぇ気にしてた。
7月中の土日は帰ろうかと迷っていた紫だが、
フラノから東京までの交通費を考えると、そんなに行き来するわけにもいかない。
紫のおじさんも
『こっちは大丈夫。夏休みまでは帰らなくていいから。』
と娘の前で格好つけてみたりして…
忙し過ぎて全然大丈夫じゃねぇのにな。
紫のいない穴を、アルバイトを一人増やして乗り切るつもりだったが、
あいつの代わりにすんなら、後2〜3人は増やさないと無理な話しだろ。
やっぱ東京って遠いよな。
ラベンダーの季節に紫がいないことで、しみじみそう思う。
だから仕方なく手伝ってやってる。(バイト代はしっかり貰うけど)
俺だって暇なわけじゃねぇ。
自分の家の畑の手伝いだってしなくちゃならねぇ。
だけどジャガイモ畑が忙しいのは、秋の収穫時季に入ってからだから、
ラベンダーシーズンと被らない今は手伝える。
夏真っ盛りの間の畑の手伝いは雑草取りがほとんど。
親父は気軽に
『草削っとけよ。』
なんて言うけど、
広大な畑の除草は、骨の折れる仕事なんだよ。
15時に紫ん家の土産物店を上がり、自分家の畑の雑草をひたすら抜く日々。
日が暮れるまで忙しい俺は、最近まともに弓も引いてねぇ。
弓の練習時間を割いて、紫の代わりをやってんのに、あいつは……
『うそー!?大樹がうちの店手伝ってんの?
え〜?大丈夫?リピート客減らさないでよ?』
そんなムカつくことを言いやがる。