「天体観測用グッズ、何も持ってこなくてごめんね?
星座早見盤はどっかに失くしちゃったし、望遠鏡は好きじゃないから持っていないんだ。
家庭用の小型望遠鏡ってさ、月を見るならいいと思うけど、
沢山の星を一遍に見ること出来ないじゃん?
俺が好きな星の見方って、肉眼で空全体を一つに捕らえて……」
「遠い昔に作られた、星の神話を思いながら、
夜空に物語を描くのが好き………でしょ?」
「…ゆかりちゃん…凄いな。
もしかしてエスパー?俺の心の中、覗かれてる?」
「ふふっ、何と無くそう言うと思っただけ。
私も望遠鏡より、そっちの方が好き」
「ふーん…そういう所が同感覚って…何か嬉しいな」
流星は同感覚なのが嬉しいと言ってくれたけど、
私は別な意味で嬉しかった。
望遠鏡じゃなく肉眼で星を見るのが好きなんだって…
流星はあの夏と同じ事を言ってくれて、
心は変わっていないと、また実感させてくれたから。
ここはフラノじゃないしラベンダーも咲いていないけど、
流星と並んで見上げる星空は、5年前と同じトキメキを私にくれた。
流星は私の為に夜空に星座を探す。
「やっぱりここじゃ空が明る過ぎるか…
今日は雲がないから、割と見えると思ったんだけど……
ああ、夏の大三角はハッキリ見えるな。ゆかりちゃん、東の空を見て?」
東の空高くに視線を移すと、
一際明るい0等星の星が一つと1等星の星が二つ、
三角形を形作っているのが見えた。
あの夏に最初に教えてくれたのも夏の大三角だったよね……
5年前の流星が教えてくれた通りに、三つの星の名前を口にしてみた。
「こと座のベガ。白鳥座のデネブ。わし座のアルタイル。
ベガが織り姫でアルタイルが彦星。
天の川は…ここじゃ見えないね……」


