驚いてそう言うと、たく丸さんは頭を掻きながら照れていた。
亀さんはお手本にたく丸さんからって言ってたし、きっとこの中で一番上手いのだろう。
よしっ!
もっと近くで観察して、自分の番までにコツを掴まなくちゃ!
何気に昔から勝負事には燃えるタイプだった。
毎年正月には、
うちと大樹の二家族で、カルタトランプ大会をするのが恒例行事なのだが、
私は誰より真剣で、負けると本気で悔しがる、そんな性格をしていた。
二杯目…三杯目と流される素麺の動きと、
たく丸さんの手元を間近でじっと見つめ続けた。
最後の5杯目が流された後には、何となく速度とタイミングを掴んだ…気がした。
たく丸さんは5回の合計28本の素麺を掴み、
この記録は優勝に違いないと、亀さんが感嘆していた。
じゃあ28本を抜けば私が優勝なんだね?
よーし!頑張るぞ!!
「次、月岡さんやってみる?」
「はいっ! やります!」
張り切って即答すると、
亀さんは意外そうな顔をした後に、声を上げて笑った。
割り箸を持ち竹の前で構えを取り、2階の流星に声を掛けた。
「流星!
手加減はいらないから!いつでもどーぞ!」
「わ〜お。意外と熱くなる君に首ったけ〜。
竹だけに首ったけ〜なんて……」
「もうっ!
集中力、途切れちゃうから早く流して!」
「ごめ〜ん。
んじゃいくよー」
箸先と流星の手元に全神経を集中させた。
集中力を研ぎ澄ませたら、きっと麺の動きがスローモーションの様に………
見える筈がなかった。
一杯目の素麺は1本も掴めず、二杯目は2本、
三杯目も2本、四杯目は3本………
予想以上に難しい…
掴んだと思っても、速過ぎる水流に麺を持っていかれる。
たく丸さんの28本という記録が、いかに凄い物であるかを身を持って知った。
次で最後の5杯目…
もう優勝は無理だけど、合計10本位は取りたい所だ。


