既に1ゲーム目を取っている彼女は、2ゲーム目も快調にポイントを重ね、
あと1ポイントで試合が決まる所まできた。
彼女のサーブ。
ボールを二回バウンドさせた後高く放り上げ、
綺麗なフォームでラケットを振り下ろした。
その瞬間……
テニスウェアの衿元から、
シルバーチェーンのネックレスが飛び出し、胸元で弾むように揺れた。
ペンダントトップには小さな石の付いた……
金の指輪か…?
指輪に付いている小さな石は、夏の強い太陽光を透過させ、
紫色の小さな光を、白いテニスウェアにチラチラと映し出していた。
あれは……
フェンスに額を押し当て、食い入るようにそれを見つめた。
彼女の動きに合わせて指輪も踊るように弾む。
視力は悪くはないが、遠目だし、ゆらゆら動いて形を掴み切れない。
ハッキリとは見えないが…似ているんだ。
いつの間にか無くなっていた…
無くしてしまった…母さんの形見の、紫水晶の金の指輪に。
性的興奮があるわけじゃないのに、心臓が素早く速度を上げていく。
緊張感に喉が渇き、ゴクリと唾を飲み込んだ。
まさか…そんな事が…
頭の中で瞬時に一つの仮想のストーリーが組み上げられた。
ゆかりちゃんは本当は紫(ムラサキ)ちゃんで…
忘れてしまったあの夏、
俺は彼女に指輪を預けたんだ。
再会の日に返してもらうことを約束して。


