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退院してしばらくの間は、外出も出来ない程にふさぎ込んでいた。
楽しみにしていた中学へ行く気にもなれず、
一日をただ無気力に過ごしていた。
後悔と罪悪感に苛まれる日々。
その中で、取り返しのつかないどん底まで落ちずにいられたのは、
あのメッセージカードを眺めていたから。
闇の中、淡い青色のライトに照らされ、浮かび上がる一面のラベンダーの丘。
夏の夜空からは無数の星が降り注ぎ、
紫色の花の群れに溶け込んで行く。
綺麗な写真だ…
多分撮影場所はラベンダーの町フラノ。
フラノのどこだろう…
富良野観光協会や、土産物店に片っ端から電話して聞いてみたんだ。
このメッセージカードと同じ物を売っている店があるのかと。
しかし、売っている店は一軒も見つからなかった。
これは商品用に作られた物じゃないのか?
この写真を撮った人物が、個人的に作成した物なのか?
この写真を撮った人…
もしかしたら“紫(ムラサキ)ちゃん”が、俺だけの為に写真を撮りメッセージカードに仕立て……
なんて…な。
何恥ずかしい妄想をしているんだ。
少女漫画を読みすぎた、女子中学生みたいだ。
大体、紫(ムラサキ)ちゃんが女の子だっていう確証もないのに。
けど…
この丸い字体といい、語尾に“ね”が付く所といい、
やっぱり女の子の気がして仕方ない。
『紫』の音読みは『し』
『し』の付く名前って…
シオリ、シノブ、シズク……
何かピンと来ない。
名前じゃないのか?
『山と言えば川』みたいな合言葉的なもの?
駄目だ…分かんない…
何で俺は忘れちまったんだよ。


