それなのに…
退院当日、龍さんがその日の明け方に亡くなったと知った。
彼の心臓は、次のドナーが現れるまで持ちこたえてはくれなかった。
うそ…だろ…
龍さんが……あんな良い人が……
目の前が真っ暗になり、病室の床に崩れ落ちた。
新しい心臓は壊れそうなスピードで速い鼓動を刻んでいた。
この心臓が予定通り龍さんに移植されたなら…
今頃、立場は逆だったかも知れない。
そう思うと、
何とも言えない罪悪感に苛(サイナ)まれた。
幸運だったと浮かれ、
龍さんを忘れようとした薄情な俺なんかより、
あの人が生きるべきだったんだ。
あんないい人が死んで、
俺が生き残るなんて…
生きられる事への歓喜は、罪悪感にたちまち押し潰された。
俺…心臓移植を受けなければ良かった…
あのまま、定められた時間を全うして死んでいけば良かった…
龍さんと同じように…


