ラベンダーと星空の約束

 


「流星君…退院決まったそうだね。おめでとう…」



その声にビクッとして振り返ると、

龍さんが車椅子を押してもらい、俺の病室に入って来る所だった。



退院の話しを聞き、彼は第二内科から第一外科までわざわざ会いに来てくれた。



本当は俺が挨拶に行かなきゃならない立場だったのに…

行けなかったんだ。



恨んでいるかも知れない。

「その心臓は自分の物だったのに」

と言われるかも知れない。



そう思うと、
怖くて会いに行けなかったんだ…




言葉が出ずに固まっていた。

そんな俺の心を察した上で、龍さんは笑って言った。



「大丈夫。僕は君の回復を心から喜んでいるから。
退院おめでとう。元気でね」



「龍さん…俺…」



「泣くなよ。
僕の心配ならいらない。

肺炎も治ったし、こうやって起き上がれるまでになった。

もうしばらくは、生きられそうな気がするんだ。

君は君の人生を、精一杯生きて……」




彼の色んな想いの詰まった優しい励ましに、涙が溢れた。



震える涙声では言葉を紡げず、俺は彼の手を握りただ頷くだけだった。




きっと龍さんにも移植を受けられる日が来る。

こんなに心が綺麗で聖人みたいな人を、神様が見捨てるはずがない。



そう信じていたんだ…
信じたかったんだ……