これからは父さんに自分の幸せを掴んで欲しい。
母さんが亡くなって9年が経ち、父さんはやっと新しい恋人を作ることが出来た。
仕事の部下だった美佐子さん。
どことなく母さんに似た笑い方をするこの人を紹介された時、俺はすぐに頼んだ。
父さんと結婚してやって下さいと。
もう俺のことは大丈夫だから、父さんには誰よりも幸せになって貰いたい。
そんな訳で、
明絖は自宅から通える距離だが、入学したらすぐに柏寮に入ることを決めていた。
父さんと美佐子さんの新生活。
やっぱ新婚時代は二人で過ごさないとな。
俺がいたらエロいこと出来ないじゃん。ハハッ!
明絖の学校案内のパンフレットを見ながら、
これからの明るい未来に胸を躍らせていた。
俺が興奮したりワクワクすると、
新しい心臓もちゃんとドキドキと心拍を上げてくれる。
あぁ、俺ってラッキーだな!
こんなに早く移植を受けられたなんて!
嬉しくて浮かれていたんだ…
あの人の事を頭の隅に追いやり、考えないようにしていたんだ……
あの人…
第二内科に入院している、二つ年上の龍之介さん。
彼は俺とは違う病名の心疾患で、俺と同じく移植待機患者だった。
長い入院生活で龍さんとは随分親しくさせてもらっていた。
彼の病状は俺よりも深刻で、
当然移植の順位も繰り上がっていき、一番目の待機患者になっていたんだ。
やっとドナーが現れた。
そう喜んだ時に彼は…
肺炎に掛かり、折角のチャンスを流すことになってしまった。
そして…
彼が貰うはずだった心臓は、今俺の中で動いている……


