涙を流し力無くうなだれた。
そんな俺の頬を、彼女は両手で挟み込む。
その手に力を込めて俺の顔を上げさせ、無理矢理目線を合わせてくる。
涙でぼやける視界の中で、彼女の綺麗な瞳が真っすぐに俺を見ているのが分かった。
何だろう…この感じ……
目が逸らせなかった。
漆黒の瞳の中に、不思議と紫色の無限の広がりを感じていた。
彼女を色に例えるなら紫色だと思う。
凛として強く優しい香りの漂う紫色。
何でこんな事を思うのかな。
不思議だ……
彼女に紫(ムラサキ)ちゃんのメッセージカードを見せると、知らないと言われた。
彼女は紫(ムラサキ)ちゃんではない。
なのに彼女の瞳の中には、ラベンダー畑と星空の…
あの写真の風景が広がっているように見えてしまう。
ゆかりちゃんが、紫(ムラサキ)ちゃんだと良かったのに……
「流星…泣いているわけを教えて?あなたの心の中を見せて?
私、逃げないから…向き合って流星を受け止めるから……
だからお願い。流星も私から逃げないで……」
俺の涙を指で拭い、無遠慮に瞳の中を覗き込んでくる。
何故だろう……
本当は触れて欲しくない。
心の傷を誰にも触られたくない。
それなのに、彼女には全てを話さなければいけないような気がした。
いや、全てを聞いて欲しくなった。
俺から逃げないと…
俺にも逃げるなと言ってくれる彼女になら、
心を見せてもいい気がした。
「かなり重い話しだよ……聞いたこと後悔しないでね……」
「後悔なんて絶対にしない」
彼女がきっぱりとそう言い切ったのを聞いて、
心臓移植の話しをした。
それは一年半前のこと……


