ラベンダーと星空の約束

 


『軽い』は苦手で『俺自身』は苦手じゃない。

『軽薄』は俺の代名詞みたいなもんだけど。



「流星…私の質問に答えてないよ?
何で体育祭に参加しないのか教えて?」



「はぁ……別にいいけど、つまんない話しだよ?」




適当な理由を並べても彼女は納得しないだろう。

真剣な表情にごまかす事を諦めて、瑞希にさえ言わなかった本当の理由を話した。




「ゆかりちゃんが疑ってるように、別にスポーツが嫌いな訳じゃない。

医者からも体を動かせって言われてる。

けど…運動すると気持ちが悪いんだ」



「具合が悪くなるの?」



「そういう“気持ち悪い”じゃなく、メンタル的な意味でだよ。

普通はさ、走ると心拍が上昇してそれから息が切れるだろ?

でも俺の場合はそうじゃない。

息が切れても心拍数は平常時とほとんど変わらない。

医者が言うには、移植された心臓の神経は俺の体と繋がってないから、確かにそういう状況になるらしい。

心拍数の上昇がやたらと遅く、下がるのも遅い」



「なるほど…
走って息が切れても、心拍数は中々上がらないんだ」



「そう。それが心臓移植の当然だよって言われてもさ…違和感ありまくりなんだよなー。

思う様に心拍数があがってくれない。

運動すると、この心臓がいつもにも増して他人行儀に感じるんだ。

俺の中で動いているのに、お前の物じゃないと主張されてる気がして…

体育系をサボる理由はそんな所」



「うん…分かった。話してくれてありがとう…」



「納得した?」



「………」




嘘は言っていない。

大雑把にだけど、誰にも言わなかった正直な気持ちを話したつもり。



何でそんなに俺を知りたいのか分からないけど、これで満足だろ?



そう思ったが…

「納得した?」との問いに彼女は頷かず、
傷痕を凝視したまま何かを考え込んでいた。