正直な思いを口にした。


流星は言い難そうにしていたが、私は知りたい。

どんな重たい話しでも、流星のことなら全てを知りたい。



「教えて」と真顔でお願いしたのに、
流星はまたふざけたことを言う。




「慶子さん聞いたー?
ゆかりちゃん、俺とエッチしたいって!」



「は? そんなこと言ってないよ!」



「俺の全てを知りたいんでしょ?
ベッドの中でエロテク教えてあげるね。
女の子に、ねちっこいって言われてるから、覚悟しといて〜」



「そういう意味じゃないって!

もう…そうやって…すぐにごまかさないでよ……遠い……遠すぎるよ……」



「ん?ゆかりちゃん?」





遠く感じた。

紫水晶の指輪を返せる日が遠く感じた。



『もう一度
私達の想いが重なり合う時』


その時に返そうと思ったけど、
それが何光年も先の話しの様に、果てしなく遠く感じた。



さっき無言で見つめ合えた時に、流星の心に触れた気がしたけど…
また分からなくなった。



真剣に話しがしたい…
向き合いたい…そう思っているのは私だけ。


すぐにふざけてごまかすから、見えかけた物も消えてしまう。



胸元に下がる紫水晶の指輪を、ブラウスの上からギュッと握りしめた。



流星は「どうしたの?」と言う様な、とぼけた表情で私を見ていた。



彼は知らない。

母親の形見の指輪が、今、私の手の中にあることを。




遠い…

私が流星にもう一度恋をする日も、

流星が私への想いを呼び覚ます日も……