男は少女を抱きかかえ、病院へと向かった。

 男が手当てをする程度では済まない。

 それだけの出血だった。

 タオルを少女の顔に当てて、出血箇所を圧迫する。

 それでも血は止まらずに、すぐにタオルも染まってしまった。

 それでも傷を押さえながら、車の助手席に少女を横たえる。


「ちくしょう!」


 車を発進させても、病院までが酷く遠く感じられた。

 たびたび赤信号で止められ、その度に少女の様子をうかがう。

 血を失って、肌は蝋のように白くなっている。

 唇も色を失って青白く、代わりにタオルが鮮やかな紅色に染まっていた。

 首や腕の傷からの出血は止まっていたが、頭部の出血が止まらなかった。

 車内には血の匂いが充満して、男に吐き気を思い出させる。