「どこに行くの?」


「海、夏休みに行った海に行きたい。」

矢島くんは、あの日の自分に後悔していて、もう一度やり直したかったと告げた。

悪いのは私なのに…。

思い出すと、胸がチクリと痛んだ。



行き先は、夏休みにみんなで行った海。

電車でとなりに座る。
緊張しているせいか、何だか体が熱い。

「音楽聞こうよ。」


矢島くんは、イヤホンを片方私に差し出す。
いいよと遠慮しても、いいからいいからって、無理やり耳に入れられた。


矢島くんの耳と私の耳。
同じ音楽でつながった。

この曲いいでしょって、私の顔を覗き込まないで。

矢島くんには普通のことでも、私にとってはこんなことさえ初めてで…。

何だかすごく恥ずかしくて、音楽どころじゃなかった。