「でも、俺も本気だから。」

空を見上げたまま、矢島くんは言葉を続けた。


「俺、上原さんが好きだよ。誰にも渡したくない。」


ドキンとして立ち止まる。

矢島くんが、私の前に来て言った。


「上原さんが、俺を好きになってくれるように、俺、頑張るから。」


びっくりして顔を上げる。
そこには、優しく微笑む矢島くんがいた。


「なんで…そんなに…。」

知らぬ間に涙が溢れて、頬を伝って流れていく。


「泣かないで。」

そうして強く抱きしめられた。

「今はただ、そばにいてくれるだけでいいから。」


矢島くんは、わかっているんだ。

私が、上原くんを見ていることを…。


「好きだから…。」


矢島くんに抱きしめられながら、心は複雑な想いに揺れていた。





もうすぐ12月になる。

夜の風は冷たくて、私の心をビリビリと破りながら吹き抜けていった。