上原くんが、ゆっくり振り向く。
距離が近くて、ギュッと身体が縮こまる。


「結、あのさ…。」


「ん?なに?」


名前を呼ばれて顔を上げると、至近距離で目があった。

上原くんは、口元に手を当て横を向く。


「あ、いや、その…結って、胸、ないよな。」


私の胸ー?
カーッと頭に血がのぼる。


「な…!いきなり、なに?バッカじゃないの!普通、そういうことは…!」


最悪最悪最悪!

私が叩くふりして、上原くんに詰め寄ると、ぐっと手首を掴まれた。


「結、違う。」


「もー、なによー!」


私は掴まれた手を振りほどいて、走り出す。


私はがむしゃらに走って走って…走ったつもりだったけど…。



すぐに、つかまった。


「ばか、なんで逃げんだよ。」


「に、逃げてなんか、ないっ!」

ハアハアと荒い息なのは私だけで、上原くんは涼しい顔。


「痛い、離して!」

私の手を掴む上原くんを見上げて、思いっきり睨んだ。

わざわざ、私をバカにするためにあんなところにいたなんて…