「こんなとこで何してんだ?」

泣き顔を見せたくなくて、目をそらして俯いた。


「お前、泣いてたのか?」

言い当てられて驚いた。
思わず私は、目をこする。

「な、泣いてないよ。」


「結…

上原くんが何か言おうとしたその時、遠くから綾香の声が聞こえた。

「うーえーはーらーくーん!どこー?」


声のする方に目をやって、上原くんは眉根を寄せた。

「やべっ!結、気を付けて帰れよ、じゃあな!」


そう言って、走っていってしまった。
上原くんの姿は、あっという間に見えなくなった。

びっくりした…



未だ胸のドキドキが収まらぬ中、今度は綾香が走ってくる。

「あれー?結?どうしたの?」


「う、うん、ちょっと疲れて…。」

「大丈夫?今日は頑張ったもんね…あ、ねえ、上原くん見なかった?」


「えっ?上原くん?見てないけど…。」

うそ…ついちゃった…。


「そっかー、おかしいなー、こっちじゃないのかなー?あ、結、またねー!」

首をかしげながら、綾香もまた走り出す。

ああ、そっか…。
二人で、会ってたのか。


何してたのかな…。
ううん、そんなこと、考えたくないのに…。


もう、帰ろう。
私は、重い気持ちのまま、歩き出した。