「ねー、聞いてよー!上原ってー、いつもはあんななのに、キスのときはすっごく強引なんだよー!」


綾香は、あの日のキスを私に言いたがる。

もう何度も聞いた。

本当は、聞きたくない。
想像しただけで、胸が痛い。


心の奥に閉じ込めたはずの、上原くんへの想い。

綾香の話を聞く度に、心がキシキシする。

どうしてまだ、こんなに苦しいんだろう。
どうしてまだ、こんなに泣きたくなるんだろう。





隣の席に座る上原くんは、いつもと変わらない。

どうせなら、変わってくれた方がいい。


もっとベタベタしててくれたら、スパッと諦めがつくのに。

もっと見せつけてくれてたら、ちゃんと忘れられるのに。





この席が辛かった。
早く席替えしたかった。

2学期の初めは、ずっとモヤモヤしながら過ごしていた。



そこに、訪れた運動会。

最悪のタイミング。


矢島くんのこと、綾香のこと、上原くんのこと…それだけでも憂鬱なのに、
運動会なんて、やってらんないよ。