私は、みんなより先に帰ることになった。


フラつく私を、矢島くんが手を伸ばして、抱きとめてくれた。


正面にいた上原くんと、目があった。

あっ…と思ったけれど、どうにもできない。

ガサガサした気持ち。
早くこの場から立ち去りたい。


「矢島、ちゃんと送ってけよ。」

上原くんの声。


私は、そろそろと歩き出した。

矢島くんにもたれかかるようにして、駅まで歩いた。


海でのことが尾を引いて、なんとなく気まずい。

話す言葉も見つからない。

それでも、私を気遣ってくれているのは、触れた腕から伝わってくる。





電車に乗ると、私は目を閉じた。


遠くなる意識。


「今日は、ごめんね…。」

矢島くんの声が、微かに聞こえた。