はあはあはあ…


みんなが泳いでいる浜とは、少し離れた場所にたどり着く。

ずいぶん流されてきたみたい。


岩と岩に囲まれた小さな砂浜。

矢島くんは、浜に上がるとゴロンと寝転んだ。


はあはあはあはあ…


矢島くんの息が荒い。

顔の上に手を乗せて、苦しそうに胸を上下させている。


そうだよね、あんなに遠くから、あんな早さで泳いだんだもん。

きっとすごく大変だったんだ。



大丈夫かな…

私は心配になって、矢島くんの顔を覗き込む。


「矢島くん?」


はあはあはあはあ…


「大丈夫?」


「はあはあはあ…うえ…はら…さん…ちょっと…待って、ね…はあはあはあ…すぐ…行く…から…。」


「うん…。」


矢島くんの手が、私の手をキュッと掴んだ。

「…好き、だから…はあはあはあ…。」


そう言って、にっこり笑う。
そんなに息が上がって、苦しそうなのに…。


私なんかのこと、なんで好きなの?

私は…。