「…カズ…。」


名前を呼ばれてハッとした。


上原さんから視線を外し、腕に抱いている亜紀を見た。

俺がキスをしているのは亜紀で、上原さんじゃない。


亜紀の気持ちを受け入れよう…そう思ったのに…それなのに、なんでこんなにまだ、身体中が上原さんでいっぱいなんだよ…。





上原さんの姿は、もうなかった。



俺は、亜紀の唇を解放した。

濡れた唇が、俺を責めたてるように赤く光っている。



亜紀の目が、ゆっくり開いて俺を見つめた。


「身代わりでもいいよ…。」


赤く濡れた唇からこぼれた言葉は、俺の胸を突き刺した。