「じゃあ、カズへのお願いは…結が来たら抱きしめて、どこにも行くなって、本気の激しいキス、するんだよ。
キスして彼から結を奪うこと。それが私のお願い。」


なんだよ、コイツ…。
まったく亜紀は、底なしのバカか…。


俺は、亜紀を見上げ、しっかりと視線を掴んではっきり応えた。


「ああ、なんでもしてやるよ、来たらの話だけどな。」


亜紀は「うん」と頷いた。

上原さんは来ない。
そんなこと、わかっている。

あいつのいる場所から、離れるわけがない。

だけど、亜紀が言うように、俺を一瞬でも心配してくれて、俺のことを思ってくれて、あいつのいる場所から、ここに来てくれることがあったなら、もうそれだけで俺は満足だ。

それだけで嬉しくて、俺はもう、充分だ…。


そんなこと、考えるだけで、バチがあたりそうだ。