「カズのことが、ずっと好きだった。」


亜紀の思わぬ告白に、心が揺れた。
唇に残る柔らかな感触。

今まで友達だったのに…違うのか…?

親指で唇に触れながら、頭を整理する。
それでも、亜紀とキスとか…わけがわからない。


一層苦しくなる胸の内。
俺は、一体何をしているんだ?


亜紀は俺から手を離し、両手で顔を覆った。



「…ごめん、言うつもりなかった。」



亜紀のかすれた声は、俺の心を掻き毟る。


「なんで…?」


「…ごめん、カズの辛そうなとこ、見てらんなくて…だからと言って、私じゃダメなことも分かってる…。」


亜紀は両手で顔を隠したまま、声を殺して泣いていた。

そこにいたのは、いつもの元気な亜紀じゃなかった。
まるで、親とはぐれた子猫のように、ふるふると震えていた。