「ん?どうした?」
「あの日の「借り」を返しにきたよ。」
「えっ?何言ってんの?」
「…私も、変わらないよ…上原くんへの気持ち。ずっとずっと変わらない。」
「なんだよ、突然。」
私は、教科書を開いて、読み始める。
「五月雨の降りのこしてや光堂。
あたりの建物が、雨風で朽ちていく中で、光堂だけが昔のままに輝いている。
まるで、光堂にだけは、五月雨も降り残しているようなことではないか。…俺も変わらない。」
「…結…。」
「やっと見つけたの。上原くんのお手紙。」
「…結…。」
「ありがとう、こんなに遅くなっちゃったけれど、ちゃんと「借り」を返すから、聞いてくれる?
私、今、上原くんが教科書をくれた場所にいるの。」
「…結…。」



