私は、ためらいがちに頷いた。

断ることなんかできなかった。



宇佐見くんが、私の前にゆっくりと近づいてくる。

正面に立つと、もう一度穏やかな声で私に聞いた。



「あなたを、抱きしめて…いいですか?」



褐色の瞳が大きく揺れている。



「ん…。」



その瞬間、強く強く抱きしめられた。


「ずっと…ちゃんとね…こうしてみたかったんだ…。」



「宇佐見くん…。」



「上原さんは、俺の初恋だった。幸せになってね…さようなら。」



ふっと体が軽くなる。

宇佐見くんは、走って屋上から出ていった。



残された私は、あまりの突然の別れに、ただただそこに立ち尽くしていた。