「でも、会いたい気持ちを我慢して、私のリハビリと練習にずっと付き合ってくれました。」

由里子さんは、私に向かって柔らかにほほ笑んだ。



「本当に素敵な人ですよね、海斗くんは。結さんが、うらやましいです。」



由里子さんは、高校を卒業したら付属の大学に進んで、もう一度バドミントンをやり直すことになっているという。



「海斗くんは、私の腕のことで…高校を辞めて働くと言っています。でも…私はそんなことさせたくありません。海斗くんは、オリンピックの強化選手のメンバーに選ばれています。将来を期待されている選手です。このままバドミントンを続けさせたいんです。」



由里子さんは、私に向かって言った。



「結さん、どうか海斗くんを説得してください。このままバドミントンを続けるように言ってください。試合をしている海斗くんを見たら、これを辞めさせるなんて絶対にできない…。」



自分では上原くんを説得しきれなかった。

私ならば、それができるのではないか。

そう思って、無理に頼んでここに来てくれた由里子さん。



どうかお願いしますと何度も頭を下げて、由里子さんは帰っていった。

礼儀正しい涼やかな人だった。