しばらく歩いていくと、池のほとりのベンチに人影が見える。

背を向けて座ってるけれど、あれは上原くんだ。



もう時間なのかと、時計を見れば、まだ8時30分。

上原くんも早く来ていた。




心臓が高鳴る。

上原くんは、ヘッドホンをしている。



近くまで来たのはいいけれど、なんて声をかけよう…。

ヘッドホンをしているし…。



後ろ姿を見ているだけで、ドキドキが止まらない。

私は、上原くんの首に腕を巻きつけ、後ろからそっと抱きしめた。



上原くんは、ビクリと小さく跳ねる。

でも、すぐに私だと気が付いて、ヘッドホンをはずした。



「…結?」



「…うん。」



上原くんは私が回した腕に、そっと手を重ねる。

私は、もっと強く抱きしめた。