あ…
胸が、キュンと音を立てる。

上原くんの顔、優しい優しい笑顔だった。


「結、ありがとう。よく分かったな。これ、俺が借りたやつ。」


上原くんが笑ってくれた。
それに、ありがとうって。



「帰るんだろ?」


「あ、うん。」

そこから、私たちは並んで歩いた。

上原くんの隣にいるだけで、バカみたいにドキドキする。



街路樹を抜けると、お互いの家は反対方向。


「じゃ、またな。」


「あ、うん、またね。」


上原くんは右へ、私は左へと歩き始めた。

はああ…ドキドキした…。
胸を押さえながら、ゆっくり歩を進める。


心臓は、まだ弾んでいる。
体中が上原くんでいっぱいだった。

私は、もう一度上原くんを見ようと振り返る。



…えっ?



立ち止まり、こちらを見ていた上原くんと目があった。

上原くんはすぐに向きを変え、何も言わずに走っていってしまった。


ああ、びっくりした。

上原くんも振り返っていたなんて。


何か言い忘れたのかな?
なんで、こっちを向いていたんだろう。



何度考えても、私にはその意味を見つけ出すことはできなかった。