宇佐見くんは、顔を片手で隠して、後ろを向いた。


「くそっ、言うつもりなんかなかったのに!」



小刻みに震える背中に向かって、私は言った。


「…ありがとう…。」



宇佐見くんは、目を真っ赤にして振り返る。


「上原さん…もう少しだけ…好きでいさせてくださいね…。」



私は、返事に戸惑った。



「亜紀は…?」



「…亜紀は、俺が上原さんのことを好きだっていうこと、知っていますよ。」



私は驚いた。

そんなこと、一言も言われたことはなかった。




「俺と同じだよ…好きな人のことは…何でも分かるんです。」



宇佐見くんは、皮肉気な笑みを浮かべる。


「だって、ずっと見てるから。俺が上原さんを見ていたように、亜紀は俺を見てくれていた。」