…あっ…。
上原くんは、2両先のドアからホームに降り立った。
数歩進んで、立ち止まる。
その横顔の懐かしさに、きゅっと胸が痛い。
上原くんは、駅の看板を見上げていた。
そして、ゆっくりこちらを向く。
私は、両手で口を覆いながら、泣き出しそうになるのをぐっとこらえていた。
ホームに降り立った人々は、皆 階段に吸い込まれていく。
見つめ合う私たちだけ、時が止まっていた。
心臓は歓喜の鼓動。
なのに身体は動けない。
ざわめく人の波が途切れてなくなり、私たちを隔てるものは何もなくなった。
上原くんがゆっくり近づいてくる。



