暗い室内。

椅子に人影。



「こっち。」

宇佐見くんの声がする。



そばに駆け寄って、どうしたのと小声で尋ねる。

宇佐見くんは、腕時計を何度も見ていた。

時間を気にしている?



柱の時計を見れば、あと少しで11時30分。





「上原さん…ごめんね。」



えっ…?



宇佐見くんは、いきなり私を抱きしめた。






「う…宇佐見くん…?」



「ごめん…。」



強く抱きしめられて、なにがなんだかわからない。

どういうこと…?



少しずつ後ろに押されて、身体がテーブルにぶつかった。




「えっ、ちょっ、う、宇佐見くんっ!きゃっ!」



私は、そのテーブルの上に寝かされた。

宇佐見くんが、覆いかぶさるように私を抱きしめる。



「えっ、なに…?宇佐見くんってば!」



腕の中から抜けようともがいてみても、強く抱きしめられて動けない。



ごめんと謝りながら、宇佐見くんは、私を抱きしめつづけた。

時計の針は、ちょうど11時30分を指していた。