「今日の英語のとき、ずっと二人でなんかやってたじゃん。」

矢島くん、あれ、見てたんだ。


「あ、あれは上原くんが、変なこと書くから、だから!」

咄嗟に大声になる。

私、何でムキになってるんだろう…。
これじゃ、浮気の言い訳してるみたいだ。

「大声だすなよ、分かったから。あのさ、もう海斗と話さないでよ。」


「え?そんなこと無理だよ。席、隣だし。」

「彼氏の俺が、嫌だって言ってるのに?」


「…。」


私が答えられずに黙っていると、矢島くんは吐き捨てるように言った。

「いいよ、もう。」

それからは、何も話さずしばらく歩いた。




公園の入り口まで差し掛かる。


…えっ?


突然、矢島くんが私の手を掴んで、公園の中に入っていく。


「ちょっ、ちょっと、矢島くん。」


「キャッ!」


ぐいぐい手を引かれて、私はバランスを崩してしまった。

身体を預けるように、彼の胸の中へ。



そのとき、林道の前方から、自転車が近づいてくるのが見えた。

だんだんと、はっきり見えてくる自転車。


…乗っていたのは、上原くんだった。

上原くんは、私たちをチラッと見ると、何も言わずに通り過ぎていった。


上原くんが通り過ぎた瞬間、私の体にはトゲがいっぱい刺さったみたいだった。