それは、恋の歌だった。
優しい声と切ない歌詞が、キュッと心に響いてくる。
宇佐見くん…好きな人いるのかな…。
なんか、そんな気がする。
歌い終わった宇佐見くんは、鍵盤から手を下ろして目を瞑っている。
私は、そっとドアを開けて音楽室に入った。
宇佐見くんが、ハッとしたように振り向く。
「あ、先生に鍵を閉めてきてって頼まれて…。」
宇佐見くんは、小さく笑っておいでと手招きする。
「何かあるの?」
私は、宇佐見くんの方に近づいた。
「上原さん、ピアノ、弾けます?」
「…うん、少しだけ…なら。」
それを聞いた宇佐見くんは、自分が座っていた椅子に私を座らせた。