その後も、何の変りもなく、時間が過ぎていた。



上原くんを想いながら過ごす日々。

宇佐見くんとも、いたって普通。




2学期になり、進路の話題も出はじめてきた秋の日。


音楽室の鍵が開いたままだから、閉めてきてほしいと先生に頼まれた。



放課後、5階の音楽室へ向かった。

階段を昇っていくと、かすかにピアノの音がする。




歌声…?



優しい声と、温かなピアノの音色。




ああ、宇佐見くんだ。



細く開いたドアの隙間から、宇佐見くんの様子が見える。

音楽室のドアの外で、宇佐見くんが弾き終るまで、歌い終わるまで待っていた。