「そんな…。」


「でも、どうしても、どうしても…結に会いたかった。結のこと、忘れることなんかできない。

毎日、結の夢を見る。こうして腕に抱いて、結はいつも俺に笑いかけてくれる。毎日毎日…見るんだ…もう、たまらなかった…会いたくて会いたくて…壊れそうだった。」




上原くんの目から、涙がスーッとこぼれて落ちた。


「許して…こんなことをしたら、結が辛いのはわかってる…でも、許して…結、好きだよ…ずっと…。」




私の前髪をかきあげ、おでこに口づける。

そして、両手で私の頬を挟んで、優しく優しく唇を重ねた。



「一緒にいられなくて、結を守ってあげられなくて…ごめん。」



髪に頬を寄せて、上原くんは私に言った。




「さようなら。」


身体が急に解放され、頬に残る温かさも、優しい匂いも、皆消えてしまった。






上原くんは、わーーーっと大声で叫びながら、走り去った。