「このハンカチ、上原さん専用ですね。」


宇佐見くんは、一層笑顔を深くして、私の手にハンカチをのせる。

涙を拭くと、中でカサッと音がした。



不思議に思ってハンカチを広げると、一枚の紙が入っていた。

小さく折り畳まれたそれを広げると、アルファベットと数字の羅列が目に入る。



アドレス…?


顔を上げて宇佐見くんを見ると、うんと頷いた。


「俺のメアド。いつでもどうぞ的な感じです。」



「宇佐見くん…?」



「あ、変な意味でとらないでくださいよ。あくまでも、友達として、ですから。」



宇佐見くんは、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべながら、冗談めかして言った。

私は、自然と笑顔になる。




「あ―…その顔!いつもそうやって笑っていてください。」


「えっ?」


泣いていたはずなのに、笑っている自分に驚いた。

ああ…久しぶりに笑った気がする。


作り笑いじゃなく、自然と笑えた。



「じゃ、俺行きます。また明日。」



そう言って、宇佐見くんは店を出ていった。