「上原さん。」



商品を並べていると、後ろから呼びかけられた。

振り向けば、そこにいたのは宇佐見くん。


「ここでバイトしてるって、亜紀から聞きました。」



「そっか…。」



「あのさ、欲しいものがあるんですけど、探してもらえます?」


「はい、何でしょうか?」


ちょっと気取って応えてみる。

宇佐見くんは、ちょっと笑って頭を掻きながら、私に言った。



「消しゴム。」



「消しゴムね、こちらでございます。」



「お願いします。」


宇佐見くんは私のマネをして、わざと丁寧に返事を返す。

お互い目が合って、吹き出してしまった。



売り場まで着くと、宇佐見くんは顎に指を充てて考え始めた。



「どれだろう…。」


「どんな消しゴムを探しているの?」



宇佐見くんは、私の方を向いて言った。


「思い出を消すことができる消しゴム。」