上原くんは、宇佐見くんの方を向く。

切なげな笑みを浮かべながら。


「由里子の母ちゃんが病院にきて、俺を見てすぐ、俺の名前を呼んだんだ。
初めて見るのに、なんで俺のことを知っているのかと聞いたら、由里子はずっと俺のことを好きで、写真も見ていたから分かったって。」


上原くんは、宇佐見くんと私を交互に見て、小さく微笑んだ。

両の手のひらを合わせ、祈るようなポーズをしながら、指先を額に当てて目をギュッと瞑っている。


「由里子は俺の代わりに事故にあったんだ。せめて、一緒にいてあげたい。
俺なんかのことを好きになってくれたって聞いて、なおさらそう思ったんだ…。
由里子の母ちゃんも、そうしてくれたら由里子が喜ぶからって言ってくれてる。」




もう何も言えなかった。

上原くんが病室に戻っていく後姿を、無言で見送った。