中庭のベンチに座る。

柔らかな日差しを受けて、木漏れ日がゆれる。


ふっと風が吹いて、上原くんの前髪を乱していった。



「由里子は…あ、あのベッドに寝ていた女の子…あいつは、俺の代わりに事故にあったんだ…。」


事故?
上原くんの言葉に、息をのんだ。


「…どういうこと?」


「俺、正月に家に帰るって、結に約束したよね?」


私は小さく頷く。
上原くんも、私の目を見て頷いた。


「一日の朝、帰る準備をしていたら、先輩から買い出しを頼まれたんだ。そのとき、もう電車の時間が迫っていてね、買い出しに行っていたら、電車に間に合わなくなる。

困っていた俺を見かねて、由里子が代わりに買い出しに行ってくれたんだ。

俺は急いで帰りの支度をして、自転車で駅に向かった。

その途中、壊れた自転車と救急車が見えて、道路には頼まれた買い出しの食糧が散乱していて…。」



そのまま自分も病院に行って、今に至っているという。

上原くんは、両手で顔を覆った。



私は言葉が出ない。

宇佐見くんが、そんな私の気持ちを代弁するかのように静かに聞いた。


「でも、なんで、上原さんと別れなきゃいけないんです?」