その場所が見えてきた。
入口の赤い十字が、胸を苦しくさせる。

受付で場所を聞いて、足早に向かった。



「ここです…。」


宇佐見くんが、ドアをそっと開ける。

独特の匂いに、足がすくむ。



規則正しい機械音。

ベッドに横たわる女性。
繋がれた、たくさんのチューブ。




ベッドの横に、見覚えのある背中。


「…うえ…はらくん…?」



私の声は、思ったより震えていた。



丸まった背中がビクリと小さく跳ねて、ゆっくり振り返る。


「結…?」


私の顔を見て、目を大きく見開いた。

頭を小さく横に振り、ゆっくり立ち上がる。


「上原くん…?」


「…結…ごめん…。」




上原くんは、俯き唇を噛みしめた。

握る拳が震えている。



「結とは…お前とはもう…もう付き合えない…好きでいられなくなった…。」


そう言って、深く深く頭を下げた。



「えっ…?」


あまりに突然な、あまりに残酷な言葉に、頭がついていかない。