これは、窓ガラスに写らないようにしてくれてるだけ。

そうなんだけど…

わかってる。
わかってるけど…


完全に抱きしめられている。
すっぽり胸の中。

上原くんの鼓動まで響いてくる距離。


少し早い鼓動。
微動だにしない身体。



「うえ…はら…くん?」


絞り出すように小さく呼んだ。

上原くんの身体が、ピクリと反応する。


「あ…ごめん。」

腕の力が緩んで、身体が自由になる。

上原くんは、ゆっくり身体を離した。

寂しいような、残念なような、離れ難い気持ち。



「俺、もう行くから。」


そう言って、視線を合わさず立ち上がる。
上原くんは、逃げるように部屋に戻っていった。



残された私。
心が揺れて、しばらく動けなかった。

上原くんの温もりが、体中に残っている。

私は、自分で自分を抱きしめた。



なんでかな、涙が止まらない。
心臓をギュッとつかまれたようで、苦しかった。

さっきまで上原くんがいた場所に、手を当て目を閉じた。


好き…


大好き…



だけど、あなたは綾香の彼氏。
好きになってはいけない人。


胸が、ズキンと痛かった。