「綾香…あのさ…。」


「いいから、早くいかなきゃ、間に合わないよ。」


綾香に話したいことがいっぱいあった。
だけど、うまく言葉にならない。


戸惑う私の背中を、綾香が押した。

一歩ずつ、上原くんに向かって歩き出す。



「結!私の自転車貸してあげるから、急いでっ!」


振り向いた私に向かって、綾香が自転車のカギを投げた。

キラッと光って弧を描き、私の手の中に舞い降りた。


「ありがとう。」


ギュッと握った手の中に、綾香の想い。




私は、唇を噛んで、自転車に乗った。

もう、矢島くんのときのように、後悔はしたくない。