「ああ、笑ってくれてよかった。ね、上原さん、俺と付き合って。」

びっくりして、貯金箱を落としそうになる。
矢島くんがサッと手を伸ばして、かろうじてセーフ。


「おーい、買ったその日に壊すとかやめてくれよー!」

矢島くんは、いつもの明るい笑顔を私に向ける。

「な、付き合ってよ。」

「付き合うって言ったって…。」

私、矢島くんと付き合うなんて、できないよ…。
だって、私が好きなのは、矢島くんじゃないから…。

「矢島くん、あのね…

私が話し出すと同時に、矢島くんも話し始めた。

「俺、綾香から聞いたんだ。上原さんも俺のこと、好きなんだろ?」


「えっ…。」

サーって血の気が引いていくのがわかる。

「俺、それ聞いて、すごく嬉しかった。心配すんな。俺、上原さんのこと大事にするからさ。」

矢島くんは、私から貯金箱を取り上げて、頭の上に乗せた。


「やっほーーー!!」


そのまま嬉しそうに走り出す。

私、まだ付き合うなんて言ってないよ。

だけど、あなたじゃないなんて、絶対言えない。

あんなに喜んでくれているのに、違うなんて言えないよ…。