矢島くんは、私の唇を指差した。

「え?…む、無理だよ…そんな…。」



「ふふふ、ウソだよ、冗談。」

そう言って笑いながら、パッと手を離す。


「そろそろ帰ろうか…送るよ。」


矢島くんは、帰る支度を始める。

私は、ドキドキした心臓をおさめるのが、やっとだった。


矢島くんは、先生に提出するものがあるからと言って職員室に向かった。


私は、先に下駄箱に向かう。






あ、上原くんだ…

昇降口の階段に座って、部活を眺めていた。


上原くんのそばを通り過ぎようとしたそのとき、くるりとこちらを向いて私に言った。


「矢島にご褒美あげんの?」