問題集を抑えていた私の左手に、突然矢島くんの手が重なる。


びっくりして手を引こうとしたら、強く握られて動かせない。


「矢島くん?」


「おまじないだから…俺の。」


「えっ…?」

「上原さんの手…縁起物だから。」


「な、なにそれ、もう、ふざけたこと言ってないで早く離して。」





「…いやだ。」


どうしていいかわからずに、黙ったまま下を向く。


「ねえ、上原さん。」

名前を呼ばれて、ドキリとして顔を上げた。



「合格したらさ、合格したら…俺に、ご褒美ちょうだいよ。」


「ご、ほうびって?」



「だめ?」

「だめというか…私…。」


「わかってる。それでもいいから、俺にくれない?」



「…な、何が欲しいの?」



「…それ。」