またある時、
ミラ子は乱れた店内を綺麗にすべく
商品の陳列を片っ端から
整えていた。


ここでも整理整頓好きのミラ子の技が
生かされていた。


そこへ一人の全くもって
どないしたらそんな風になれるん?
と、
思わずタメ口で聞きたくなるような
くたびれたリーマンが一人
ミラ子の側へとやって来た。









「スイマセン……」


予想を裏切らぬ消え入りそうな客の声に
手を止め全力で聞き返すミラ子。


「はい、いらっしゃいませ。
いかがされましたか?」


嘘くさい笑顔大会が、あったなら
余裕で優勝出来るのではないだろうか。
ミラ子はスーパー嘘くさ笑顔で答えた。


するとーーー


「ジュオンの水……ありますか……。」


くたびれた……
ぼろきれの様にくたびれまくっちゃってる
リーマンが私に言うではないか。


ーーージュオンの水をくれと……


ジュオン……じゅおん……呪怨~?


「イヤイヤイヤイヤ、お客様。
いくら世の中が
アベノミクスと騒いでいる割りには
ちっとも恩恵にあやかれんのだわー
と、お思いになっても
呪っちゃいけません。
ええ、私もアベノミクスよりも
ホットケーキミクス派でございます。
あれは実に食べ盛りの子を抱える
我が家の家計に実に優しい……。」


と、
動揺してつい思っていることを
言いそうになったものの
取り敢えず、
更にスーパー嘘くさ笑顔を返した。
もはや、
西田敏行張りの笑顔だ。


スーさんとでも言ってやろうか?


するとスーさんは……もとい、
くたびれたリーマンは言った。


「常温の水、……ありますか?」








「すいませぇ~ん。
常温は置いてないんですぅ~。」









呪いの水、あったら怖いわっ!
てゆーか、
常温って……どうよ。