年齢も知らない。
普段何をしてるのか知らない。
家族構成とか。
どんな人を好きになったとか。



何も知らない。




………知れない。



私は客だから。




あの時、伊織をレンタルしたいなんて言わなければ違う道があったのかもしれない。


だけど、あの時の私にはあれ以外言葉が思いつかなかった。




何回も何回も何回も考えたんだ、そんなこと。
それをずっと考えすぎて、このザマだ。


へこたれてたまるか。
その気持ちだけが私を奮い立たせてる。


私って、こんな男関係脆かったっけ…。



そんなことをぼんやり考えていると、そこに。


ブブブブ…



ポケットに入れっぱなしにしていた携帯が震えていた。
マナーにしといてよかった。



少し安心しながら、先生がいるか確認するが、今はいないらしい。
いないのをチェックしてから携帯を取り出した。


私は和かな?なんて軽い気持ちで、携帯を開いたんだ。




「………っ」